【洋書レビュー】『Reading with Patrick』 by Michelle Kuo
1. 『Reading with Patrick』by Michelle Kuo
2. 評価 ★★★★★(5/5)
3. あらすじ
ハーバード大学を卒業したばかりの著者Michelle Kuo(ミシェル・クオ)は英語の教師としてアーカンソー州ヘレナの田舎町にやってくる。しかし、すぐに彼女は、奴隷制度とジム・クロウの遺産によって未だに機能していないこの町の現実に遭遇する。この本はその時に出会った学生の一人、Patrick(パトリック)に対する複雑だがやりがいのある指導と、彼の文学的かつ個人的な目覚めの回想録である。
Michelleは、10 代の生徒たちの生活に変化をもたらすことができると確信しており、静かな読書の時間を利用し、指導された文章を書くことで、崩壊した学校制度から取り残された生徒たちに自意識を育むという仕事に心血を注ぐ。 15歳で8年生のPatrickは、Michelleの厳しい指導の下で成長し始める。しかし、2年間教師を務めた後、Michelleは両親からのプレッシャーもあり、ロースクールに通うためにアーカンソー州を離れる。
そして、ヘレナを離れて数年後、MichelleはPatrickが人を殺し刑務所にいることを知る。ヘレナを時期尚早に去ってしまった事で、こんな事になってしまったのではないかと感じ、自分の間違いを正そうと決意したMichelleはヘレナに戻り、Patrickへの教育を再開する。 7 か月間、毎日、彼らは古典的な小説、詩、歴史上の作品を熟読する。Patrickは徐々に表現力豊かな作家に成長し、一緒に様々な本を読むことでMichelle自身も変化していく。
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4. オーディオブックについて
配信日(Audible):2017/7/13
再生時間:8時間29分
ナレーター:Michelle Kuo (著者)
著者Michelle Kuo本人がナレーションをしている。少し早口なので、ゆっくり目の0.95倍速で聴いた。詩、俳句、エッセーなどが書かれていてどこからが引用なのか少し分かりずらい部分もあるので、E-bookで読みながら聴く事をおすすめする。
5. 感想(ネタバレあり)
この本は、2022年に自分のGoodreadsの”Want to Read(読みたい本)” のカテゴリーに入れていた。なぜこの本を読もうと思ったのかは覚えていない。久しぶりに自分のGoodreadsのカテゴリーを見返してこの本が目に入り、読んでみたいと思い聴いてみる事にした。
結論。かなりいい本だった!!久しぶりの5つ星。本を読んで涙が出たのは、思い返してもこの本が初めてかもしれない。
この本を読んで、涙がでた箇所が2箇所あった。
まず、当時のMichelleの生徒の一人、Miles(マイルズ)が亡くなった兄Brandon(ブランドン)についての詩を読んだ時だ。著者は”I am” poemというシンプルなテクニックを使って生徒達に詩を書かせるのだが、Milesのようなやる気のない生徒にシンプルな質問を投げ掛け、生徒の思いを思いを引き出す事によって、感動的な詩が書けるようになるまでに成長させる。
Michelleはこんなに若いのにすごい先生だなと感心してしまった。出来上がった詩なのだが、Milesは亡くなった兄Brandonになったつもりで、”I am〜”と詩を書いている。母に対する思い、自分自身(Miles)に対する愛情が詩に滲み出ていて、涙が出てきた。そして最後には、「みんなが心配しないといいな。自分は天国で楽しんでいるから」という風に詩を締めくくっている。
次に泣けた部分は、Patrickが刑務所にいる時の最後の宿題のエッセーだ。
そこには、Patrickが最初に刑務所でストレスを感じたことが書かれてあった。
Ms.Kuo(著者のMichelle)が初めて、刑務所にいる自分を訪ねて来た時がストレスに感じた、と書いてあった。
え?刑務所って、もっと他にストレスを感じることあるよね?と意外だったのだが、その後にその理由が分かった。
Patrickのエッセーには、最初のMichelleとの面会が終わった後に、面会室で一人泣いたことが書かれてあった。「自分の事を誰かが気にかけてくれているという事がストレスに感じる。なぜなら、それは自分が彼らにストレスを与えているという事だから」そして、最後に、「自分があの時に泣いたのは、誰かが自分の事を気にかけてくれていたから」と。MichelleとPatrickが接する中で、お互い泣いたり、激しい感情をあらわにする事がなかったのに、最初にMichelleが刑務所に来た時に実はPatrickがそんな事を感じていたんだと知って、胸が熱くなってしまった。
Michelleが本の前半で、教師として試行錯誤して奮闘する様子や、2年目からは慣れてきて生徒と冗談を交わすまでに成長する姿は、聴いていて微笑ましかった。
それにしても、自分がもし著者のようにハーバード卒で頭もよかったら、いかに稼ぐかを考えて行動すると思う。Non-Profitの会社で働くあたりや、給料がいい訳ではないのに教師として働くのを決めた著者の、「お金よりも自分が何かを変えたい」という強い思いには感服させられる。
また、後半のPatrickの文学的な成長は目を見張るものがあった。著者が言っていたように、自分は本当に少しの事しか教えていないのに、7ヶ月でこんなにも成長するなんて。文学の力はすごいなと思った。
私もこのブログを始めたばかりで、今のところ語彙力もなく文章もおぼつかないが、Patrickのように毎日続けていれば、自分も成長出来るかなと思わせてくれた。
オーディオブックで聴いた本だったが、俳句やポエム、詩の引用があるので、実際の本でまた読んでみたい。また、この本の中で言及されていた本も機会があったら読んでみようと思った。