【洋書レビュー】『The Anxious Generation』子育て中の親なら読んでおきたい本
1. 『The Anxious Generation』by Jonathan Haidt
2. オーディオブックについて
配信日(Audible):2024/3/26
再生時間:10時間32分
ナレーター:Sean Pratt
聴きやすい声。1.2倍速で聴いた。
3. 本の概要
2010年代初頭、思春期の子供たちの精神的健康が急激に悪化し、うつ病、不安、自傷行為、自殺の割合が急上昇した。著者のJonathan Haidt (ジョナサン・ハイト)は『The Anxious Generation』で、この現象について調査し、子供が自由な遊びや独立した探検を通じて成長する必要があると指摘している。1980年代に始まった「遊びに基づく子供時代」の衰退が、2010年代初頭の「スマホに基づく子供時代」によって完全に消滅し、子供たちの社会的および神経学的発達を妨げていると述べている。著者は、ソーシャルメディアが特に女の子に悪影響を与え、男の子が現実世界から仮想世界に引きこもるようになった結果、破滅的な影響が出ていると説明している。そして、精神疾患の流行を終わらせるために、親、教師、学校、テクノロジー企業、政府が取るべき具体的な対策を提案している。
4. 評価 ★★★★★(5/5)
5. 感想
最近ベストセラーランキングの上位になっている本なので読んでみたいと思っていたが、Oprah Winfrey (オプラ・ウィンフリー)が全ての子育て中の親なら読むべきとインスタで、おすすめしていたので、オーディオブックで聴いてみることに。オプラのYouTubeチャンネルでもこの本について動画で紹介されている。下記から見れるのでチェックして欲しい。
この本の感想を一言で述べると、この本を読んで良かった!
子育て中の親ならよく悩む、子供のスクリーンタイム。制限しなくてはと分かっていても、なぜそれがいけないのか、子供にどんな影響を与えるのかはよく分かっていない人は多いはず。私もその一人だった。でも、この本を読むと何がいけなくて、どういう取り組むをすればいいのかが明確に分かるようになる。
普段あまり子育てに関する読んで、他の人にもすすめたいと思うことはそれほどないが、この本は同世代の親に知らせてもっと広めたいという気にさせてくれた。
この本で一番印象的だったのが、ソーシャルメディアが女の子に影響を及ぼすのかという事。
ソーシャルメディアが男の子より女の子に悪影響を及ぼす理由の一つは、単純に女の子の方が男の子に比べてソーシャルメディアをより多く利用するからだそう。使えば使うほど精神に悪影響を及ぼすとのこと。
では具体的にソーシャルメディアの何がいけないのか?ソーシャルメディアは現実世界ではないというのが一番のポイントなのだ。特に女の子は男の子に比べて恋愛や社会生活で容姿で判断される事が多い。必然的にソーシャルメディアに載っている綺麗なモデルたちのようになりたい、と思うようになる。例えば、顔が小さくて、目が大きくて、ふっくらした唇など、インスタグラムでは沢山見かける。でも、それは現実離れしている容姿なのだ。
私がカナダに来たばかりのころ、トロントのヨガスタジオで受付として働いていた時があったのだが、新しく入ってきた20代の若い女の子と一緒に働く機会があった。Kim Kardashian (キム・カーダシアン)やKylie Jenner (カイリー・ジェナー)の話になったときに、その子は「私はカーダシアン一家は好きではない」と言っていた。なぜか理由を聞くと、「カーダシアンの整形の顔や、現実離れした体格をソーシャルメディアで広めるのは悪影響だ。若い女の子がそれをみて、それが美の基準だと思ってしまう」との事だった。全く気づかないことだったので、その時はそんな見方があるのかなるほどと思ったのだが、この本を読んで、若いのに当時からしっかりソーシャルメディアの悪影響を理解していてすごいなと改めて思ったのだった。
また、女の子は友人や家族に感情や鬱であることを話す事が男の子に比べて多い。そうすると、そのネガティブな感情が広まってしまうとの事。これは鬱であることや感情を話す事が悪いと言っているのではない。女性はポジティブな感情を伝染することがあるのだが、ネガティブな感情の方が伝染力が強いというデータがあるそう。
ソーシャルメディアが女の子の精神に悪影響を与えている一方、男の子に悪影響を与えているのが、バーチャルゲームとオンラインポルノなのだそう。
最近の若い世代は、木に登ったり、車を運転したり、直接好きな人に告白するという現実世界で軽いリスクを取る事が減っているのだそう。その代わり、現実世界とかけ離れたバーチャルゲーム、オンラインポルノで欲求を満たす男の子が増えてるのだ。
例えば最近の親は、誘拐や事故を恐れて子供たちだけで外で遊ばせる事が少ない。どこかに行かせる事があってもGPSで行動をトラッキングをするなど、子供を常に監視状態に置いているケースが多いのだ。そういった親の監視が子供達がanxiety (不安)を抱えてしまう理由の一つなのだそう。
現実の世界で親が安全目的で子供に自由な遊びをや、自主的に探検させることは制限するが、ソーシャルメディアを使うこと、バーチャルゲーム、オンラインポルノを利用することには全く制限がかけられていないのだ。著者がこの本で一番問題視したいのはこのことかなと思った。
この本を読んで、まずは子供に自由な遊びをさせることを増やす、そして家でのスマホの制限はもちろん、子供が思春期になったら学校をスマホフリーにさせるように働きかけたいなと思った。
社会がこの問題を訴えないと、学校、テクノロジー企業、政府も何も変わらないので、できるだけこの本を広めていきたいと思う。
子育てする親に是非おすすめしたい1冊だ。日本語版はまだ出版されていないが、それほど難しい単語もなく聴きやすい内容だったので、是非洋書版でチャレンジして欲しい。
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